狭小住宅を得意とするハウスメーカーや工務店の中でも、間口が狭く奥行きが長いウナギの寝床のような土地に建てることができる大手ハウスメーカーから中小工務店迄、事例たっぷりで紹介します。敷地間口4.2mで建てられる家も。
目次
間口が狭い土地
都内・駅近・人気の場所で土地を探していると安い土地が出てくることがあります。でも、よくよく見るとと、所有権ではなく借地権だったり、敷地延長の旗竿地であったり、擁壁が必要な崖の土地であったり、間口が狭い土地であったりします。
間口の狭い土地がなぜ生じるか
間口の狭い土地は、もともとは1区画の大きなお屋敷があったところが、相続などの理由で販売されることになり、大きな土地では総額が大きくて買い手がつかないため、小さく分割されて分譲されることで生まれます。
間口の狭い土地でも、土地の良さをうまく生かすことができれば快適な生活が送れます。
間口が狭い土地の注意点
間口がさらに狭くなる
一般的にどんな土地でも、建物は隣地と50cm離す必要があります。
これは、民法上の規定になっていて、隣地と合意がない限りは、自分の家の建物は隣地境界線から50cm離すことが必要になっています。
なので、例えば、間口が4.2mしかない土地は、間口が3.2mの建物しか建てることができません。
これはかなりキツイです。というのも、建物の外寸が3.2m幅なので壁の厚みを考慮すると実際は3メートル弱の間口になってしまいます。
日本の家は、尺貫法で建てられる家がほとんどですが、畳の短辺である91cmを一マスとし、するとだいたい3マス分強の幅になります。
ちなみに、尺貫法の単位で一間(いっけん)は、1.82メートルで二マス分。
二間は、3.64メートルで4マス分になります。
リビングルームは、3マス幅でも無理ではなありませんがかなりの工夫が必要になります。出来れば4マス幅は欲しいところです。
【実例集】3640幅と3185幅のリビングルーム 4マスと3マス
予算・建設費が高くなる
間口の狭い土地は、建物の建設費が高くなります。
理由は、設計の難易度も上がるほか、場合によっては重機が入れなかったり、足場設置や上棟に人手と日数がかかってしまい狭い割には手間がかかってしまうからです。
土地は安くても、建物が意外と高くつくのが狭小地の特徴です。こんなはずじゃなかった、ということにならないように、土地の購入前に建物のプランニングはしっかりしておきましょう。
建物も間口の狭い家では、木造、重量鉄骨でもあまり差がなくなってきます。坪単価で100~120万円ぐらいを基準に、いろいろと見積もりをとってみるといいと思います。
斜線制限の影響を受けやすい
隣地斜線制限や北側斜線制限の影響を受けやすいのが間口が細い土地のデメリットです。特に3階建ての場合、大きく斜めに切られた建物になり、土地の容積率を十分に利用することができません。
間口が狭い家で生活できるか?
絶対的な狭さ、という観点では、古今東西を見渡せば、現代の日本の狭小住宅のはるかに上をいくような、無茶苦茶狭い家がたくさんあります。
江戸時代の長屋
江戸時代の庶民の長屋は、間口が9尺(2.7m=3マス)で奥行きが2間(3.6m=4マス)の9尺2間だったそう。間取りは、4畳半に1畳半の玄関兼土間が付いたもので、面積は9.6m2になります。江戸時代の長屋は間口は3mもありません。
10平米もないスペースに商売道具やなんやらかんやらが置いてある家というか、部屋で4人家族が生活していたそうです。
古今東西の狭小住宅
さらに、鴨長明の方丈庵(一丈四方9.18m2)、ル・コルビュジェのカップマルタンの小屋(16.85m2)、立原道造のヒアシンスハウス(15.15m2)など、狭い事例は世界中にはたくさんあります。
海外の狭小間口住宅
狭小間口の住宅は日本だけかとおもったらアジア圏のほかにも、ヨーロッパやカナダやアメリカ・オーストラリアの一部にもあるようです。
オランダなどの古い町並みでは幅が3mもない家もしばしば。
築100年を超える住宅は住人が「自殺階段」と呼ぶほど、傾斜がキツイ階段であったりします。
ロンドンの狭小住宅
下のYoutube動画は、海外(ロンドン)の狭小間口住宅ですが、採光の取り方が工夫されてますね。
アメリカのウナギの寝床住宅
狭小住宅といは言えない広さですが、ウナギの寝床の家のイメージの参考に。
巨大な吹き抜け、中二階、中三階のダイニング、リビング。
天窓。
左右に建物が詰まっていても広さと明るさを感じさせる仕掛けが多数。
海外の人からみた狭小住宅
海外の人からみた日本の狭小住宅。
雑誌のようなプロが作った動画です。
3階建狭小間口住宅の標準的な間取り
間口が狭い狭小住宅の場合は、幅の狭さを不満に感じさせないようにするか、光をどう取り込むかが、特に問題になります。
実際に私も、狭小住宅の間取りをいろいろ見たり、実物もいろいろ見学したりお邪魔したりしましたが、いいなと思う家の間取りには共通点があります。
暮らしやすい狭小住宅の標準的な間取りはだいたいこんなところではないでしょうか?
幅の狭さが、一歩進んで、何か特別な心地よさに転換された建築にできれば、住む人にとってのいい建築になると思います。
1階 玄関・ガレージ・水回り・書斎
道路側にガレージ。玄関を入って、書斎や納戸、奥にトイレ、洗面室やお風呂というパターン。
たまにしか使わないエリアを日当たりが特に悪い1階に集中させる間取りです。
洗濯機も1階に置かれる場合が多いのですが、2階、3階に重い洗濯物を干しに行くのは大変です。
乾燥機の活用を考えましょう。
2階LDK・吹き抜け・天窓
2階のリビングで、上部に吹き抜けをつくる。
上部にはさらに天窓を作ることで狭くても明るい家を作ります。
階段は光が抜けるオープンステア。壁紙は白。家具や建具の色も明るい色で統一感を持たせてごちゃごちゃしないようにすっきり。
3階 吹き抜け部・子供部屋
斜線規制がかかって間口がさらに狭くなってしまうので、斜めの部分を上手に使えるかどうかがカギ。
条件が良ければ、吹き抜けにキャットウォークも。
屋上
間口があまりとれないので、屋上を設置しているお宅はあまりありません。
屋上の設置は趣味の世界かな。
ただし、近所の家も設置していないことがほとんどなので、屋上を設置できれば目の前には広々とした世界が広がります。
間口が狭い建物を作ることができる大手ハウスメーカー
ヘーベルハウス
重量鉄骨のヘーベルハウス。
「都市のホソナガ3階 FREX タウンコンポ」という商品名で、狭小&狭い間口の住宅プランにも対応しています。
建物間口2.7mからの対応をうたうのはハウスメーカー業界でもここだけでは?
重量鉄骨は断熱性が悪くなるというデメリットがありますが、柱を少なくすることができるので、間口いっぱいの大開口や、上下階をつないだ吹き抜けをつくるなど、広々とした空間を演出することが可能。
壁を通常より薄くできる薄壁仕様もあり、その場合は15センチ間口を広げることもできます。
建物間口3メートル 間取り
ヘーベルハウスの狭小住宅で細い間口の家の実例。
下の間取りはCase#02として紹介されている間口が3.05メートルの狭小住宅です。
実際には外壁の厚さがこれに必要になりますが、これであれば隣地の合意がなくても間口4m強までの敷地で建てることができます。
狭小住宅でスキップフロアや、アウトドアリビングは正直ごちゃごちゃしてしまって使いにくいような気もしますし、オフセット階段も建物内の貴重な間口が無駄に使われてしまっているような気もしますが、技術的にこんなこともできますよ、という提案だと思います。
ホームページもしっかり作りこまれていて、どのハウスメーカーのものより細い敷地の建物のイメージがわくようになっています。ヘーベルハウスは宣伝が上手ですね。
https://www.asahi-kasei.co.jp/hebel/lineup/towncompo/index.html/
パナソニックホームズ
同じく重量鉄骨のパナソニックホームズ。
15センチ単位で間口が決められる設計。
https://homes.panasonic.com/common/case/128/
パナソニックホームズ狭小間口住宅実例2
https://www.kyoto-panahome.co.jp/co_photo/f754e99fb0e64b91fcf67d39-20.html
ミサワホーム 間口3.18mも!
間口3.18mの家。
ミサワホームのホームページのいいところは、間口、奥行き、坪数で自由にソートでき検索ができるところ。寸法を確認しながら実例を見ることができます。
間口でいえば、間口3m台の家から4メートル、5メートルの家など、実際の間取りを見ることができます。
実際の寸法が記載された間取り図は便利。業界としてこれをスタンダードにしてほしいと思います。
ミサワホームは、3階建てにも対応しているので、都心で断熱性が高い木質系で探すなら候補に入れておきたいハウスメーカーです。
三井ホーム
木造枠組壁工法(2×6)で高い断熱性や全館空調が魅力の三井ホーム。
三井ホームは「クレセール」という狭小地用のプランも用意していますが、残念ながら、超狭小間口には対応しておらず、最小間口で2間/4P(3.64m)からの対応です。
「クレセール・フォレスト シティ」は、屋上庭園のオプションもあったりいろいろ魅力的。
壁の厚さも考えて、間口4.8mとか5mぐらいの土地を用意できる人にはいいかも。
中小ハウスメーカー・工務店
地元の事情が分かるので、気になる会社があったらいろいろ調べてみましょう。
MA住空間設計室
省エネルギー性にも優れていて、日本エコハウス対象新築部門優秀賞2018を受賞した設計室です。
UA値 | 0.24W/㎡K |
---|---|
ηA値 | 1.4(冷房期)、1.3(暖房期) |
C値 | 0.20c㎡/㎡ |
一次エネルギー消費量 | 98.9GJ/戸・年 |
地域区分 | 6 |
屋根・天井 | セルローズファイバー240㎜+XPS100㎜ |
外壁 | セルローズファイバー100㎜+ネオマフォーム100㎜ |
床・基礎 | 防蟻XPS50㎜ |
窓 | アルス木製防火窓 |
気密 | 外周構造用面材気密テープ張り |
その他 | ─ |
冷暖房 | アメニティエアコン4.0kw(ダイキン) |
給湯 | エコジョーズ(ノーリツ) |
換気 | 第一種熱交換換気システム(ローヤル電機) |
創エネなど | ─ |
所在地 | 東京都文京区 |
---|---|
家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
構造 | 在来木造2階建 |
敷地面積 | 81.70㎡ |
建築面積 | |
延床面積 | 130.42㎡ |
設計 | |
完成年月所 |
SUR都市建築事務所
SUR都市建築事務所は、「雑司が谷ZEH」で、日本エコハウス対象新築部門優秀賞2017を受賞した設計室です。
性能がいいのとデザインもいいのでお値段は坪単価100万円を覚悟しておいた方がいいかも。
DATA
所在地 | 東京都豊島区 |
---|---|
家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
構造 | 木造SE構法、地上3階 |
敷地面積 | 119.78㎡ |
建築面積 | |
延床面積 | 115.21㎡+車庫12.0㎡+小屋裏11.35㎡+吹抜24㎡ |
設計 | SUR都市建築事務所 |
完成年月所 |
省エネルギー性
UA値 | 0.35W/㎡K |
---|---|
ηA値 | 2.4 |
C値 | 0.92c㎡/㎡ |
一次エネルギー消費量 | 48.7GJ/戸・年 |
地域区分 | 4 |
屋根・天井 | ウレタン吹付200㎜+透湿遮熱シート+通気層30㎜+遮熱塗装ガルバリウム鋼板 |
外壁 | 外壁通気+ウレタン吹付120㎜+フェノールフォーム30㎜外張り |
床・基礎 | 基礎断熱:防蟻TBボード50㎜外張り+スタイロフォーム50㎜内張り +スカート断熱50㎜、W450㎜ |
窓 | 小窓:防火FG-H(LIXIL)+Low-E復層ガラス 引違窓:防火サーモスX(LIXIL)+Low-Eトリプルガラス+シャッター |
気密 | ─ |
その他 | ─ |
冷暖房 | 暖房:床下 ツインコンプレッサータイプエアコン28+薪ストーブ 冷房:3階 ツインコンプレッサータイプ壁掛エアコン25 |
給湯 | エコキュート370L |
換気 | 第3種換気+簡易与熱給気 |
創エネなど | 太陽光発電5.25kw |
泉北ホーム
1階床面積25.26m2(7.64坪)
2階床面積37.68m2(11.4坪)
3階床面積34.78m2(10.52坪)
延床面積97.72m2(29.56坪)
施工面積116.86m2(35.35坪)
建築面積38.60m2(11.68坪)
敷地間口4.2mで建てられる家
https://www.senbokuhome.co.jp/model_plan/detail/8
https://www.senbokuhome.co.jp/model_plan/?frontage=1
設計工房
間口3.15m、縦にも横にも細長い
うなぎの寝床状の住宅。
黒い外観にスクエア状の窓がアクセントになっている。
- 建築場所
- 東京都渋谷区
- 主要用途
- 専用住宅
- 家族構成
- 夫婦+子供2人
- 構造規模
- 木造軸組構法地上3階建て
- 敷地面積
- 62.17㎡
- 建築面積
- 34.46㎡
- 延床面積
- 109.62㎡
http://www.sekeikobo.com/works/sasa.html
東京組
城南地域でちょこちょこ見かける東京組。
渡辺ハウジング
都内で2×4で手ごろな価格で作るなら、東京都板橋区の1985年設立の老舗、渡辺ハウジング。
都内が主な活動エリアですが、埼玉とかでも施工実績があります。
施工事例を見てみると、敷地面積10坪台の家がゴロゴロ。
中には敷地面積10坪の家も。
年間12棟の規模だそうで、対応できない場合もあるそう。
板橋区、北区、練馬区、豊島区、文京区をはじめ東京23区を中心に、2×4工法で狭小住宅を建築する渡辺ハウジング(東京都板橋区、渡辺康司社長)。従業員5人、固定大工職人が3人の自社施工で年間12棟を受注建築「OB客のために末永く会社を維持する必要があるので無理をしない」事業規模を継続している。狭小住宅に特化した同社のホームページ(HP)には月間約1万2千件の訪問がある。問い合わせ数は年間200件以上、月間では15~20件程。渡辺社長は言う。「町場の工務店だけど負債もなければしがらみもない。工事費に負担が掛かる高額な広告も出さなければ、カタログも作らないし、執拗な営業活動もしない。頼るのは自社のHPだけ。そこから例え20件の問い合わせがあっても、そのうち契約するのは1件。その他についてはお断りしないといけない。年間12棟の規模だから」
https://www.housenews.jp/equipment/11595
BLISS
狭小住宅の専門家を名乗る建築会社、BLISS。ホームページによれば、一年で約300棟を手掛けていてそのうちの8割、240棟が狭小住宅だそうです。東京の都心部、千葉県の西部地域(松戸市や船橋市)、神奈川県の横浜・川崎が営業エリア。
スーパーウォール工法も対応。
木造軸組、2×4に対応。
価格的にはローコスト住宅に分類されるようです。
オープンハウス
狭小3階建て住宅で業績拡大中のオープンハウス。
三栄建築設計
聞きなれない方も多いと思いますが、三栄建築設計は1996年設立、2006年東証一部上場の狭小住宅を得意とするローコストビルダーです。
木造軸組。
都内によくあるような3階建ての住宅。
狭小間口の家も作っています。
お値段にどこまで入っているか不明ですが、お値段はお手頃の1600万円。
HOPEs
東京城南地域の工務店。壁芯「2730」=1間半の狭小間口住宅。
シンプルで長屋の佇まいをもつ狭小住宅
http://archi-hopes.co.jp/blog/gallery/n%e6%a7%98%e9%82%b8/
高砂建築
SE工法の家。
SE工法を建てるにあたり、参創ハウテックと悩まれて高砂建築にした方のブログ。
SE構法+外断熱・二重通気工法で家を建てて暮らす
東京都北区で家を建て替え、住んでいます。ここではその過程を書いていきたいと思います。
http://kitsunekon2.seesaa.net/
間取り作成
広くはないけど快適な家づくりが、狭小住宅の課題です。
全国展開しているハウスメーカーや地域によっても得意不得意のある工務店さんをイチイチ調べて資料請求をするのは大変ですが、一括資料請求サービスならまとめてできるので便利です。
私は、タウンライフ家づくり、で資料請求をしました。
このサービスのいいところは、全国600社の中から自分の地域で家づくりを行う会社を選べること。600社の中には、積水ハウス、三井ホーム、ダイワハウス、旭化成(へーベルハウス)、セキスイハイム、住友不動産、三菱地所ホームといった大手に加え、埼玉・東京で強い富士住建といったローカルな中小工務店や、セルコホームみたいな輸入住宅もまとめて選べます。
そして、ただパンフレットをもらえるだけではなく、間取りも作成してもらえ、どれぐらいの予算が必要となるか教えてもらえるところです。
狭小住宅で間取りに悩んでいる方にお勧めだと思います。
きれいなパンフレットを眺めるだけでも楽しいので、今後、家を建てるかもしれない人はとりあえず資料請求をしておくといいかも。
▼資料一括請求 公式サイト▼