UA値について。規制値の歴史や各国の基準、快適な住宅に求められるUA値はいくつか?
外皮平均熱貫流率(UA値)
UA値とは、家の断熱性能を示す数値です。UA値が小さければ小さいほど家の外に出てしまう熱が少なく、断熱性が高いことを示します。
2020年に建てられる家は、どこで建てるか、どんな工法かにもよりますが、UA値0.3~0.87ぐらいです。
国による断熱性に関する基準の歴史
いまでこそ、だいぶ数値が向上していますが、昔の断熱性は数分の一以下でした。
歴史と一緒にUA値の基準値を見ていきましょう。
(UA値と地域区分6/南関東の断熱等級を記載しています。)
UA値1.80 等級2 (S55年基準)
日本で初めて導入された断熱性の基準が昭和55年基準です。旧省エネ基準や断熱等性能等級の等級2ともいわれます。
断熱性を表す基準に、当時はUA値ではなくQ値を使っていました。
昭和55年基準はQ値で5.2。これはUA値換算で約1.80になります。
UA値1.54 等級3 (H4年基準)
平成4年、1992年の昔の基準が平成4年基準です。新省エネ基準や断熱等性能等級3ともいわれますが、いまから28年も前の基準で、「新」省エネというのは何ともややこしいですね。(笑)
5、6地域に適用されるUA値は1.54。Q値2.7の換算です。
その後の平成25年基準ができる前まではこの基準だったので、現在建てられている多くの家はこの基準か、これ以下になります。
これでも以前の昭和55年の基準に比べれば、3割、冷暖房エネルギーの削減が可能になりました。
とはいえ、今ではお話しにならないレベルの断熱性で、昔の家が寒い理由がよくわかります。
UA値0.87 等級4 (H25基準/H11基準)
平成11年基準の等級4というグレードが、いまから7年前に導入されたのが平成25年(2013年)基準になっていて、現在の基準になります。
住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)に基づく、断熱等性能等級 4の基準に達していると、フラット35の中でも金利が低いフラット35Sの適用が可能です。
断熱等性能等級 4の基準は、5、6、7地域共にUA値は0.87以下になります。
H25基準は、平成11 年(1999年)に制定された「次世代省エネルギー基準」が、若干変わっているものです。
東日本大震災後のエネルギーへの意識の高まりも背景に、それまで20年間続いてきた基準に比べて、一気に倍以上の基準に厳しくなりました。
建築物省エネ法平成25年基準では、5、6、7地域共にUA値は0.87以下にすることが定められています。
外壁の断熱材の厚さは90mmぐらい。90mmはちょうど2×4の壁の厚さになります。
サッシはアルミのペアガラス窓です。
長期優良住宅、フラット35S、認定低炭素住宅となるのは、このレベルからです。
そして、断熱等級4が、2025年には法律上クリアしなければならない、最低限の基準になります。
2022年に新設された断熱等級
等級5から7迄は、2022年からの新設の等級になります。
元々、国による断熱等級4迄の基準は、本当に最低限を満たすためのもので、残念ながら温かい快適な家には程遠いものでした。
そこで、民間団体が快適で豊かな生活を送るために必要な断熱性の基準を定めていたのですが、これが国の基準として採用された、というのが経緯です。
建物は一度作ると何十年も使われるという、財産です。
省エネや脱炭素・カーボンニュートラルの流れも受けて、国も重い腰を上げて断熱性能の強化に動き始め、23年ぶりに、一挙に3等級が追加されたました。
2024年度には新築住宅の販売・賃貸時に省エネ性能表示の義務化がなされる予定になっている他、2025年には断熱等級4が、2030年には断熱等級5に適合することが義務化される予定です。
つまり、これに適合していない住宅は、2030年には古い低性能の住宅となります。
UA値0.6 等級5 (ZEHレベル)
断熱等級5は、これまで、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、略してZEH(ゼッチ)と言われていた断熱性能に必須な等級です。
地域区分4~7迄のZEH基準がUA値0.6です。強化外皮基準とも呼ばれます。
外壁105mm、U値2.33の樹脂アルミ複合サッシ窓で、天井の断熱材は105mmあれば実現できます。
国は、2020年までに、標準的な新築住宅はZEHとすることを目指していて、ハウスメーカー、⼯務店等が作る新築住宅の過半数がZEHとなっていることを目標にしていました。
ハウスメーカーは、ゼッチに対応している製品を出せないとハウスメーカーの顔がつぶれるので、多くのメーカーでゼッチ対応の商品が開発されました。
ゼッチ対応を出しているメーカーのすべての商品が断熱性に優れているわけではないのですが、ゼッチ対応モデルを選ぶことで最低でもUA値0.6の家を選ぶことができます。
現在では、メーカーによっては、このレベルが最高水準かもしれませんが、断熱性を考えると、最低でもUA値0.6が必須です。
2030年には断熱等級5が最低限満たすレベルとして義務化される予定です。
2018年からは導入されたZEHM(ZEHマンション)もこのレベルが求められます。
ZEHM、あんまり聞かないですし、流行っていないのかもしれません。
おまけ UA値0.56 等級5 (HEAT20 G1)
ZEHがなかったころ、民間団体が最低限は欲しいレベルとして定めたのが、HEAT20のG1です。
数字がZEHに近いので、2022年の新設基準とはなりませんでしたが、上位であるHEAT20 G2とHEAT20 G3が、そのまま断熱等級6と7に使われることになりました。
おまけ UA値0.5 ZEHプラスレベル
ZEHを超える性能を持つのがZEHプラス。
補助金が最大115万円もらえたことがありました。
2018年度のZEHプラスのレベルは、1・2地域:0.30、3地域:0.40、4~7地域:0.50
ZEHプラス、あまり聞かないですね。
https://sii.or.jp/moe_zeh31/uploads/zeh31_pamphlet4.pdf
UA値0.48 断熱等級6 (HEAT20 G2) これからのスタンダード
断熱等級6は、民間団体が以前、HEAT20 G2レベル (6地域)と呼んでいたものです。
外壁105mmに付加断熱ボード45mmを追加、U値2.15の樹脂アルミ複合サッシ窓で、天井の断熱材を155mmにすれば実現できるレベル。
暑くもなく、寒くもない、快適な家と言えるのはこれぐらいから。
断熱材メーカーの解説
https://www.dupontstyro.co.jp/images/catalog/heat20.pdf
UA値0.46 H25基準の1地区
改正省エネ基準で一番厳しい地区に厳しい1地区(北海道:旭川市、釧路市等)の外皮平均熱貫流率[UA値]の基準値は0.46(W/m²K)
UA値0.28 一条工務店標準仕様
一条工務店の標準的なモデルi-smartのUA値は驚きの0.25。Q値は0.98ぐらいです。
業界最高峰の断熱性を謳うだけあってぶっちぎりの性能です。
ZEH認定のために北海道で求められる断熱条件を、標準仕様でクリア。
Q1.0住宅は大体UA値0.28ぐらいですが、それすらを上回ります。
一条工務店の断熱性能が良いのは分厚い断熱材とサッシの性能の高さ。
しかも断熱材はただ分厚いだけではなく、一般的なグラスウールの約2倍の断熱性を持つ高性能ウレタンフォームを使用してます。
窓の性能が高いところがポイント。樹脂サッシトリプルガラスです。
断熱材は、壁が140mm(2×6)+50mm
天井は235mm、床は140mm。
窓はLow-Eトリプル樹脂サッシで、U値0.8です。
部屋の熱は半分近くが窓から逃げていくと言われます。
さらに、給排気ともに強制的に行う第1種換気。
イヤハヤすごい。他のハウスメーカーもホント一条工務店を見習ってほしいです。
https://www.ichijo.co.jp/topics/i-zero/
UA値0.26 断熱等級6 (HEAT20 G3)
2019年6月に開催された「HEAT20からのメッセージ 2019報告会」にて発表されたHEAT20 G3案。
H25年基準レベルと概ね同等のエネルギーで全館暖房が可能なのがHEAT20 G3。
断熱材は、壁が120mm×2枚
天井は120mm×3枚、床も120mm×2枚
窓はU値1.9樹脂窓です。
諸外国の外皮平均熱貫流率(UA値)
野村総研のデータです。
アメリカのUA値は0.34~
ドイツのUA値は大体0.3~0.36
日本の断熱性の基準はお隣韓国以下であることがわかります。
北海道札幌市の住宅基準
外国ではないですが、寒冷地札幌市の断熱性の住宅基準、「札幌版次世代住宅基準」
高断熱・高気密住宅の普及を進めるために、国の基準を上回る札幌市が独自に設定した高断熱・高気密住宅の基準ですが、かなり厳しいです。
札幌版次世代住宅の等級 暖房エネルギー消費レベル | 外皮平均熱貫流率(UA値)[W/(m2・K)] | 一次エネルギー消費量(全体) | 一次エネルギー消費量(暖房+換気) | 相当隙間面積(C値)[cm2/m2] |
---|---|---|---|---|
トップランナー 無暖房住宅に近いレベル | 0.18以下 | 等級5 | 35%以下 | 0.5以下 |
ハイレベル ミニマムレベルよりも6割 | 0.22以下 | 等級5 | 45%以下 | 0.5以下 |
スタンダードレベル ミニマムレベルよりも4割程低減 | 0.28以下 | 等級5 | 60%以下 | 1.0以下 |
ベーシックレベル ミニマムレベルよりも2割 | 0.36以下 | 等級5 | 75%以下 | 1.0以下 |
ミニマムレベル 平成 28 年基準相当(一般の新築住宅レベル) | 0.46以下 | 等級4 | 90%以下 | 1.0以下 |
トップランナーは、ドイツのパッシブハウスのレベル。
ベーシックレベルは、北海道の「北方型住宅 ECO」と同等水準
UA値はどれぐらいがいいのか?
低ければ低い方に越したことはありませんが、理想は、5、6地域なら最低でもUA値0.48以下、できればHEAT G3の0.34を目指してほしいですね。
壁は、2×6の場合、壁厚が140mmまで取る事ができるので、断熱材も140mmまで入れることができます。
2×6で、高性能な樹脂サッシ窓を入れれば実現できます。
窓は、トリプル樹脂窓。
換気システムには第1種で熱交換率90%以上あるものが良いと思います。
UA値関連リンク集
関連資料
こちらのリンクから、どれぐらいの窓の性能、どれぐらいの壁の断熱材等、どんなスペックであれば、どのUA値になるかが、簡単にわかります。
https://www.isover.co.jp/support/by-region
超高断熱住宅マップという地図もあり、実際に建てられた家の図面やスペックを見ることができます。
https://www.isover.co.jp/project/mch/map
こちらはHEAT20についてのわかりやすい資料。
http://www.heat20.jp/members/data/2016/2016_2_suzuki_nunoi_matsuoka.pdf
ハウスメーカー比較
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極寒地ロシアの家で快適に住んでいた我が家が東京に引っ越してきて凍えた話。
暖かく快適な家を建てるには、断熱性に加えて二つ必要なことがあります。
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【24年2月最新版】人気ハウスメーカー販売戸数ランキング ベスト10+1
どの窓がどのスペックか?
断熱性の高い窓・サッシ ランキング 一条工務店採用モデルは?
こちらは断熱玄関ドア