サラリーマンには医療保険は要らないと考える理由について。わが家は生命保険・医療保険に入っていません。そんな話をすると「えっ?」て聞かれることも多いのですが、保険に入っていない人も結構います。
目次
サラリーマンと保険
人生でマイホームの次に高い買い物と言われているのが保険です。
一言に保険といっても、保険には大きく分けて2つの種類があります。
1つ目は、命に保障をかける生命保険、2つ目は入院や手術の時にもらえる医療保険です。
今回は、二つ目の医療保険について、サラリーマンの医療保障について考えていきたいと思います。
医療保険とは
一般的に医療保険とは、病院で手術を行なった時や入院をした時、最近では通院をした時などに支払われる保険のことです。
ポイントとしては、1回の手術や入院1日、通院1日でどのくらいの金額が保険料として支払われるのかというところです。
医療保険支払い例:
入院 | 5,000円~10,000円/日 |
手術 | 10~30万円/回 |
保険に加入する方の年収や職業、家族状況により異なりますが、保険の営業員が勧めてくるのは、大体上記の範囲であることが多いです。
しかし、上記のような医療保険が本当に必要でしょうか?
日本は世界でも珍しい国民皆保険の国であり、手厚い健康保険があります。
医療保険への加入を考える前に、健康保険の制度についてもう整理して考えてみます。
健康保険は高額医療費制度により支払額の上限が決まっている
国民健康保険を含め、各企業の加入する健康保険には家計の負担を軽減するために医療費の一定金額(自己負担限度額)を超えた金額が払い戻される、高額医療費制度があります。
高額医療費制度は、年収毎に月単位の上限額が異なります。
住民税非課税:35,400円
年収370万円未満:57,600円
年収770万円未満:80,100円 + (医療費-267,000円)× 1%
年収1160万円未満:167,400円 + (医療費-558,000円)× 1%
年収1160万円以上:252,600円 + (医療費-842,000円)× 1%
仮に年収500万円で、月に100万円の医療費がかかったとします。
上記の計算式に当てはめると
80,100円 + (1,000,000円-267,000円=733,000円)× 1% = 87,430円
となり、100万円の医療費がかかった場合でも9万円以下の負担で治療を受けることが可能です。
さらに、高額医療費制度には多数該当という制度もあり、1年間で3カ月以上高額医療費制度を利用した場合には4ヶ月目以降からは、上限が上記の80,100円 + (医療費-267,000円)× 1% → 月44,400円へと限度負担額をさげる仕組みとなっています。
この仕組みも年収毎に上限額が異なり
住民税非課税:24,600円
年収370万円未満:44,400円
年収770万円未満:44,400円
年収1160万円未満:93,000円
年収1160万円以上:140,100円
となっており、年収に合わせて自己負担額が少なくなる仕組みとなっています。
もし1年間入院したらどのくらいかかるのか
平均入院日数は約30日(厚生労働省「平成26年 患者調査」平均在院日数は31.9日)とのデータがあるため、あまり現実的ではありませんが、もし仮に1年間入院が続いた場合、治療費にどのくらいの費用がかかるのか試算してみましょう。
仮に毎月の治療費が100万円、年収が500万円として試算します。
最初の3ヶ月は前の項目で説明した下記の式になります。
80,100円 + (1,000,000円-267,000円=733,000円)× 1% = 87,430円
87,430円 × 3ヶ月 = 262,290円
となります。
4ヶ月目からは多数該当制度が適用となるため、1ヶ月の治療費上限が44,400円となります。
44,400円 × 9ヶ月 = 399,600円
となります。
1年間の治療費を出すには上記の2つを合算し
262,290円 + 399,600円 = 661,890円
となり、1年間入院などをしても最大治療費は、約66万円ということになります。
月100万円で12ヶ月、1200万円分の治療を受けても、年間で約66万円しか自己負担額がかからないのですから、高額医療費制度を知っているのと知らないのでは、今後の備えに大きな違いが生まれます。
医療保険に生涯どのくらい払うのか
月に100万円の治療費がかかるとして、1ヶ月かかる最大治療費が87,430円であることは説明しました。(年収500万円の人の場合)
それでは、あなたは医療保険にどのくらい払っているでしょうか。
医療保険支払い例:
入院 | 5,000円~10,000円/日 |
手術 | 10~30万円/回 |
上でも書きましたが、多くの保険営業員が勧めるのは上記の内容です。
ネット保険などで下記条件で保険金額をシュミレーションしてみました。
・35歳 男性
・終身保障
・60歳払込
・入院:5,000円/日
・手術:10万円/回
医療保険の支払い期間を80才と仮定して計算すると下記の式になります。
80歳−35歳=45年
45年×12ヶ月×月額保険料=
保険会社/保険名 | オリックス生命 医療保険 新CURE [キュア] | 朝日生命 スマイルメディカルネクストα |
入院給付金 | 5,000円 | 5,000円 |
入院一時金 | なし | 5万円 |
手術給付金 | 10万円 | 2.5~20万円(手術により異なる) |
通院一時金 | なし | 3万円(退院から180日以内の入院:一回のみ) |
保険料(月額) | 1,807円 | 2,784円 |
総支払額(80歳と仮定) | 975,780円 | 1,503,360円 |
会社によって保険料はことなりますが、ネットでざっと見積もりを取ってみると医療保険に生涯、カタカナ系の生命保険会社で約97万円、漢字系の生命保険会社ではなんと約150万円も支払うことになります。
大きな金額ですね。
この記事では外資系ネット保険の保険料を参考にしていますが、基本的には日本の保険会社であればもっと高額になります。
ちなみにこの2社、保険料は大きく違いますが、生涯で50万円の差があるとはとても思えません。(笑)
カタカナ系生命保険会社の保険料が安いのは、会社の運営費コストを低く抑えているからです。
国内生命保険会社には、営業担当の社員が在籍していますが、外資系生命保険会社では営業社員の代わりにCMやWeb上での広告に運営費をかけており、人件費が低い分、低コストな体質となっています。
ネットでは見積もりは取れませんでしたが、外資系ならもっと安くできる生命保険会社もあります。
もし、あなたが日本の保険会社に加入しているのであれば、1度保険証券を確認し生涯でどのくらいの保険料を支払うのか確認することをお勧めします。
平均入院日数の推移
平成26年の厚生労働省のデータを見ると現在の全年齢における平均入院日数は、33.2日となっています。
手術を1回、入院が33日と仮定すると1度の入院で医療保険からもらえる金額は、265,000円になりますので、1ヶ月の入院を3回すれば支払い保険料に対し元が取れる計算です。
つまり、3回以上、1ヶ月以上の入院をすると予測するなら、加入を検討しても良さそうです。
しかし、1ヶ月で治療にかかる費用の、87,430円に比べあまりにも過剰です。
医療保険は医療を受けた際にしか利用できません。
それならば、医療保険に使う分のお金を貯金に回せば、入院時の備えだけでなく、その他の用途にも使える柔軟な資金として使うことができます。
また、近年では医学の進歩と医療費の抑制傾向により入院日数が減少傾向にあります。
今後、高齢化が進み医療費の増加が懸念されている中、医療費を抑えていくのは社会的な課題です。入院日数を減らしていく傾向は、今後ますます加速すると考えられています。
先ほど紹介した厚生労働省のデータでも、平成元年の平均入院日数が、47.4日となっており26年間で約30%ほど平均入院日数が短くなっています。
病院に支払われる診療報酬も14日、30日、90日を境に引き下げられるため、病院側の運営的にも早期退院をさせ自宅療養を勧める傾向にあるようです。
日本の高齢化社会の影響もでてきます。
社会の高齢化により病院のベットが不足傾向になることで短期間での退院が多くなります。
この傾向は、今後も20年程度続くと予測されています。
先ほどは、33日間入院するという仮定で、入院時にもらえる金額を計算しています。
入院日数が短くなれば、もらえる金額も減少しますので、そのあたりも考慮する必要があります。
まとめ
この記事の内容をまとめると
- 高額医療費制度を利用すれば1ヶ月あたりの支払い上限は8万円+α程度
- 医療保険で損しないためには、1ヶ月の入院と手術を最低3回受ける必要がある
- 近年は医療の発展と厚生労働省の方針により入院期間は短くなる傾向にある
- 医療保険にかかる保険料を貯金した方が柔軟性の高い資金になる
ということを解説しました。
医療保険は現在100万人程度いるとされる総合失調症には対応しておりませんし、サラリーマンであれば有給や傷病手当金などの保証もあるので、医療保険に入る場合には会社の健康保険制度をよく確認し、それでも必要と感じた場合のみ加入しましょう。
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