TP-Link BE85は、Wi-Fi 7対応のメッシュWi-Fiルーターとして2025年時点でのフラッグシップモデルです。本記事では、3階建て一戸建てで3台構成のメッシュネットワークを構築し、約2か月使用した感想をレビュー形式でまとめてます。
※本レビューは、TP-Link様よりBE85をモニター提供いただき、実際の住環境で検証した内容に基づいています。
目次
■ 3行まとめ
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10Gポート×2搭載とWi-Fi 7の320MHz対応で、家庭でも業務用レベルの通信環境が構築可能。
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NURO光 10Gbpsや多数のIoTデバイス環境でこそ、BE85の真価が発揮される。
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今は不満がなくても、「将来も満足」を実現するなら、BE85は最有力の選択肢。
なぜBE85なのか?
BE85は、TP-Link Decoシリーズにおけるフラッグシップ機種です。
現時点で考えられる最高の性能を搭載していること。これがBE85を選ぶ理由だと思います。
10Gポート×2
中でも特筆すべきポイントは、10Gイーサネットポートを2基搭載していることです。実はこの構成、家庭用ルーターでは非常に珍しいものです。
なぜこれが重要かというと、例えばNURO光 10Gbpsの回線を導入している場合、ONU(回線終端装置)から受け取った10Gの通信を、宅内の10Gネットワークにそのまま流すには、ルーター側に10Gポートが2つ以上必要だからです。
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ポート①:「WAN側(NUROからの入力)」
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ポート②:「LAN側(他ルータへの出力)」
この両方が10G対応でなければ、どこかでボトルネックが発生してしまい、10Gを生かすことができません。
しかし、10Gポートを2基搭載している家庭用ルーターは非常に限られています。
理由は:
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10Gポートをつけるとコストが高くなるため、多くの家庭用ルーターは10Gに対応していない。対応しているルータでも10G対応ポートは1基のみにとどめている
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放熱設計や電力供給設計が難しく、筐体設計に工夫が必要
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多くのユーザーは1G回線または2.5Gまでで十分と考えられており、10G需要が限定的
だからこそ、BE85の10G×2構成は極めて貴重であり、10Gbps級の回線を最大限に活用したいユーザーにとって、数少ない「本命」と言える選択肢といえます。
Wi-Fi 7:320MHz帯域幅がもたらす次世代の余裕
加えて、BE85が他のメッシュルータより優れているのは、320MHz帯域幅への対応しているWi-Fi 7対応機器であるところ。
Wi-Fi 6/6Eでは最大160MHzであったため、理論上は2倍の帯域が確保できる計算になります。
多数のデバイスを同時接続しても帯域を圧迫せず、常に安定した通信を維持できるのは、この帯域幅の恩恵です。
環境の紹介:NURO光 × 一条工務店3階建
ここで私の家の環境です。
◆ 自宅ネットワーク構成
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回線: NURO光 10Gbps(実測値:下り約8.5Gbps/上り約9Gbps)
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建物: 一条工務店の3階建て住宅(全館床暖房/アルミ反射材あり)
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設置構成: 各階にDeco BE85を1台ずつ、加えて玄関にBE65を設置(計3台+1台)
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接続形態: 各階10G有線バックホール接続+無線バックホール
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デバイス数: 約50台(スマホ/タブレット/PC/IoT家電含む)
Wi-Fiにとって最も厄介なのは、床暖房のために敷かれたアルミ反射材です。これが電波を反射・減衰させ、1Fから2F、2Fから3Fへの階層間通信を難しくするのですが、ルーター間を有線LAN10Gで結ぶことでこの問題を解決しています。
ルーター間を有線でつなぐことを有線バックホールといいますが、この有線バックホールを10Gでつなげるのは、BE85に10G対応ポートが2口搭載されているためです。
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実測値と体感の変化:BE65からの小さくない進化
実際にBE85を導入して、普段よく使う環境であるソファに座った状態でスピードテストを行ったところ、下り速度はおおよそ1Gbps前後という結果でした。数字だけを見ると、BE65から劇的な変化があったとは言えないかもしれません。
しかし、大容量通信時のスループット低下が明らかに軽減されていると感じる場面が増えたような気がします。例えば、複数デバイスでの動画ストリーミングなどで、以前よりも「待たされる感じ」がなくなった気がします。
これまで使用していたBE65も非常に優秀で、速度に不満はありませんでした。また、使用しているiPhoneがWi-Fi 7の320MHz帯域にまだ対応していないこともあり、BE85の性能をフルに発揮できていない可能性もあります。
それでもなお、2か月ぐらいBE85を使って感じるのは、「数値では測りきれない快適さ」です。スマホの動画をWifiを経由して家庭用サーバーに移すとき、どんどんファイルが転送されていくのはものすごく快適です。
これこそが、BE85の真の価値かもしれません。ベンチマークの数字では大差がなくとも、毎日の使用感がちょっとよくなる。このちょっと良くなる部分が、次世代ルーターにふさわしい姿だと思います。
Decoアプリ:日本ブランドにはないユーザーエクスペリエンス
TP-Link製品の大きな魅力のひとつが、専用アプリ「Deco」の使いやすさです。
今回は、①既存のネットワークに新しいDecoを追加、②メインを新しいDecoに切り替え、③使っていたDecoを削除といったことを行いましたが、直感的な操作で画面の指示に従うだけで10分程度でセットアップが完了しました。
フラッグシップ機種とはいえ、ネットワークに詳しくないユーザーでも迷わず使えるところが圧倒的な良さです。
これは、TP-Linkはグローバルで圧倒的なシェアがあり、アプリの品質改善やファームウェアアップデートが非常に頻繁かつ安定して行われているからだと思います。
例えるなら、国内市場に特化したガラケーと、世界中でアップデートと改善を重ねるiPhoneとの違いに近いかもしれません。国内製品はハードウェアが良かったとしてもソフトウェアがいまいちだったりする印象があります。
TP-LinkのDecoシリーズは、単なるハードウェア製品ではなく、ソフトウェア例えばスマホアプリの使いやすさも含めた、使いやすい商品にななっているところが魅力であると思います。
Wi-Fi 8を待つべきか?
Wi-Fi 8(IEEE 802.11bn)は2028年の標準化予定です。しかし、実際に普及し、スマートフォンやPCが対応し始めるのは2030年前後になるでしょう。なので、Wi-Fi 7を飛び越して、Wi-Fi 8を待つのは得策ではないと思います。
今BE85を導入すれば、5~7年先まで見据えたインフラ整備が完了するとも言えますね。
デメリットは?
使ってみて特に問題は感じていませんが、デメリットを敷いてあげるとすればその大きさ。本体寸法は128 × 128 × 236 mmと、高さが24センチほどあり、堂々とした大きさになります。
本棚であればB5サイズ(182mm×257m)ぐらいの高さがあるので、設置場所は要注意かもしれません。
カニというか虫のようにアンテナがごつごつしているわけではなく、白い円筒なのでその点はすっきりしています。
10Gルーターというと熱がすごそうですが、廃熱、騒音は気になりません。手で触ってみると暖かい程度です。メーカー保証も3年ついているので故障の心配はしなくてもよさそうです。
海外ではBE95という機種も発売されていますが、日本では規制の問題からか、BE85どまりとなりそうです。これで十分だとおもいますが。。
まとめ
TP-Link BE85は、Wi-Fi 7の320MHz帯域や10Gイーサネットポート×2といった将来でも十分使える仕様で、家庭用ネットワークとしては十分な小規模オフィスのネットワーク基盤としても長く活躍できるポテンシャルを持った製品です。
現時点では、BE65や他のWi-Fi 6Eルーターでも十分に満足できる環境を構築することは可能です。しかし、デバイスの増加、回線の高速化、IoT化の進展により、今後数年間でネットワークに求められる要件は確実に変わっていきます。
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10Gbps回線をフル活用したい人
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50台規模のデバイスを安定接続させたい人
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IoTや在宅ワークなど、通信の安定性を重視する人
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これから5~7年は買い替えずに済ませたい人
そんな方にとって、BE85は「今買う価値のある1台」です。
「今は困っていない」――だからこそ、その満足を未来にも続かせるための投資として、TP-Link BE85を選ぶことには十分な意味があるのではないでしょうか?
TP-Link 公式製品紹介:https://www.tp-link.com/jp/home-networking/deco/deco-be85/
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