なぜ山の温泉旅館でマグロの刺身が出るのか
答えは、冷凍食品を使っているから。破棄によるロスを避ける為、客の需要に合わせた仕入れを行う必要があるそうです。
「山の温泉まで来て、赤身のマグロか」――。せっかく人里離れた山間の旅館に来たのだから、都会ではあまり食べられない新鮮な川魚や山菜などを食べてみたいもの。それなのに、「なぜ、赤身のマグロなんだ」と興ざめした方も多いのではないだろうか。テーブルに運ばれてくるものは、マグロ赤身、サーモン、ホタテ、甘エビといった海産物がほとんどだ。
その理由として誰もが想像つくのが、いずれも「冷凍保存の効く食材だから」という点だろう。旅館では、量の増減はあるものの全ての利用客にほぼ同じ献立を出す。そのため、大量に仕入れられる食材が必要なのだ。地産地消の食材では仕入れ量が安定しなかったり、仕入れ値が変動したりするため、提供しにくいのが実情だ。
ほかにも理由がある。旅行会社のパンフレットに載せる際に、「赤い食材」が好まれるという事情だ。例えば、マグロを筆頭に、エビ、カニ、キンメ、牛肉と「赤もの」の写真を前面に出すことで引きが強くなるという。一方で、アジやサバ、フグ、豚肉、山菜といった「青もの(白もの)」では注目を引きにくい。「赤ものは高い食材なのでは…」という解釈もあるだろうが、いやいや、手摘みの山菜などはA5等級(高格付け)の牛肉よりも単価は高い。あるとしたら「高いというイメージ」だろう。